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三毛別羆事件 [2020/10/12 22:40] moepapa |
三毛別羆事件 [2021/11/28 04:51] (現在) moepapa |
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====== 三毛別羆事件 ====== | ====== 三毛別羆事件 ====== | ||
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大正時代に起きた日本市場最悪の熊害事件で、これを超える動物による被害の出た事件はいまだに起きていません。 | 大正時代に起きた日本市場最悪の熊害事件で、これを超える動物による被害の出た事件はいまだに起きていません。 | ||
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===== 太田家の惨劇 ===== | ===== 太田家の惨劇 ===== | ||
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秋から冬にかけ、開拓村では収穫した農作物を出荷するさまざまな作業に追われていた。三毛別のような僻地では、それらの作業は人力に頼らざるを得ず、男達の多くは出払っていた。 | 秋から冬にかけ、開拓村では収穫した農作物を出荷するさまざまな作業に追われていた。三毛別のような僻地では、それらの作業は人力に頼らざるを得ず、男達の多くは出払っていた。 | ||
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===== 捜索 ===== | ===== 捜索 ===== | ||
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早朝、斉藤石五郎は村を後にした。残る男たちは、ヒグマを討伐してマユの遺体を収容すべく、約30人の捜索隊を結成した。昨日の足跡を追って森に入った彼らは、150mほど進んだあたりでヒグマと遭遇した。馬を軽々と越える大きさ、全身黒褐色の一色ながら胸のあたりに「袈裟懸け」と呼ばれる白斑を持つヒグマは捜索隊に襲いかかった。鉄砲を持った5人がなんとか銃口を向けたが、手入れが行き届いていなかったため発砲できたのはたった1丁だけだった。怒り狂うヒグマに捜索隊は散り散りとなったが、あっけなくヒグマが逃走に転じたため、彼らに被害はなかった。改めて周囲を捜索した彼らは、太田家から150m離れた場所にあるトドマツの根元に小枝が重ねられ、血に染まった雪の一画があることに気づいた。その下にあったのは、黒い足袋を履き、ぶどう色の脚絆が絡まる膝下の脚と、頭蓋の一部しか残されていないマユの遺体だった。 | 早朝、斉藤石五郎は村を後にした。残る男たちは、ヒグマを討伐してマユの遺体を収容すべく、約30人の捜索隊を結成した。昨日の足跡を追って森に入った彼らは、150mほど進んだあたりでヒグマと遭遇した。馬を軽々と越える大きさ、全身黒褐色の一色ながら胸のあたりに「袈裟懸け」と呼ばれる白斑を持つヒグマは捜索隊に襲いかかった。鉄砲を持った5人がなんとか銃口を向けたが、手入れが行き届いていなかったため発砲できたのはたった1丁だけだった。怒り狂うヒグマに捜索隊は散り散りとなったが、あっけなくヒグマが逃走に転じたため、彼らに被害はなかった。改めて周囲を捜索した彼らは、太田家から150m離れた場所にあるトドマツの根元に小枝が重ねられ、血に染まった雪の一画があることに気づいた。その下にあったのは、黒い足袋を履き、ぶどう色の脚絆が絡まる膝下の脚と、頭蓋の一部しか残されていないマユの遺体だった。 | ||